呼吸タイプ=気質タイプ
「からだをほぐす呼吸法」では、呼吸タイプは4つに分かれます。そして、4つの呼吸タイプとともに性格タイプも分かれます。
つまり、「この呼吸タイプの人は、こういう性格の傾向が強い」ということが言えるのです。
4つの呼吸タイプ(および性格タイプ)の分け方は、東洋思想の性格分類をもとにしています。
ここ最近、いろいろな学びの機会があり、心理学や脳科学や精神疾患についての知識を得ました。
そんな中、コーチング理論やDiSC理論と「からだをほぐす呼吸法」のあいだに、性格タイプの分類法において共通する部分が多いことに気が付きました。
コーチング理論やDiSC理論は、心理学をもとにした人材開発の手法です。ちなみに、コーチング理論の性格のタイプ分けは、DiSC理論の影響を強く受けているそうですので、コーチング理論とDiSC理論の性格タイプの分類法は同じ根っこを持っていると考えて差支えないようです。
なぜ、東洋医学と心理学の違いを越えて、「からだをほぐす呼吸法」とDiSC理論(コーチング理論)のあいだには性格タイプの分け方に共通点があるのでしょうか。
人間の心を取り扱っているのですから、似通ってくるのは当たり前のような気もします。
しかし、心理学をもとにした性格タイプの分け方は他にもいろいろとありましたが、DiSC理論ほどには「からだをほぐす呼吸法」とのあいだに共通点を見出すことができませんでした。
どうやら、人間の心を取り扱っているからと言っても、それだけの理由で何でもかんでも同じ分類法に行き着くわけではないようです。
では、なぜ「からだをほぐす呼吸法」とDiSC理論の性格タイプの分類法のあいだには共通点が見られるのでしょうか。
それはおそらく、ふたつの理論が着目しているものが共通していて、性格の中でも基底部分にあたる「気質」に着目しているからではないかと思っています。
逆に言うと、ほかの心理学の理論は、性格の後天的な部分も視野に入れているので、共通点が少なくなるのではないかと思います。
「からだをほぐす呼吸法」とDiSC理論は、生まれながら持っている遺伝的素養としての「気質」に着目しているからこそ、人間の根源的な部分にアプローチしていることになり、必然的に似たような分類法になっているのではないかと思うのです。
今回は、なぜ「からだをほぐす呼吸法」とDiSC理論は両方とも、気質タイプを4つに分類しているのか、について書きます。
2つでもなく、3つでもなく、9つでもなく、なぜ4つなのか、についてです。
理由は2つあるように思います。
ひとつ目の理由は、人は平面上で考えるのに慣れているから、です。
・机の上にカードを並べて考える。
・ノートやホワイトボードに何かを書きながら考える。
・地図を広げて位置関係を把握する。
・宇宙の真理を曼荼羅(まんだら)で表現する。
これらの例を思い浮かべていただければ、ご理解いただけると思います。物事を把握するのに平面を使って考えるのは、頭の中の整理ができて分かりやすいですね。
ノートに表を書いて考えをまとめることはあっても、ルービック・キューブに何かを書き込んで考えることはまずありません。立体的なモデルで物事を捉えようとするのは、よほどの特異能力がないと難しいからです。
人は平面で考えることに慣れているので、気質について考えるときにも自然とそうするのです。
平面の上で何かを分類するときに一番シンプルでスッキリとするのは、横線(X軸)を書き、縦線(Y軸)を書いて、4つの部屋(象限)を作ることです。
横線、縦線の数を増やせば、部屋の数は増えますが、あまりに増えすぎると、全体を直感的に捉えるのが難しくなります。
そういう理由からも4つぐらいが丁度良い、ということになります。
ふたつ目の理由は、人間は空間と時間を組み合わて捉えることで、世界を捉えているため、です。
わたしたちは、空間と時間の組み合わされた世界に暮らしています。
人の気質は、いかに世界を捉えているかによって変わります。
それはすなわち、空間と時間をどのように捉えているかによって人の気質が変わるということです。
思い浮かべていただきたいのですが、皆さんのまわりに「人間の作りが根本的に全く違う」「思考や発想の枠組みがまるで違う」と感じられる人はいませんか?
結構な数の人に思い当たられることと思います。
能力の差や育った環境の差ということでは説明できないような、根本的な違い。それこそが気質の違いです。
気質の違いが生じるのは、その人とのあいだに、根本的な世界の捉え方、すなわち空間と時間の捉え方に違いがあるからです。
空間の捉え方の違いを横軸に、時間の捉え方の違いを縦軸に取って、4つの部屋を作ります。
空間の捉え方の違いと時間の捉え方の違いという2つの要素で分類しているから、人の気質は4つに分類されるというわけです。
ただ、DiSC理論の場合は、横軸には「仕事指向⇔人指向」という軸がきて、縦軸には「ペースが速い⇔ペースが遅い」という軸がきます。
これはDiSC理論がビジネス研修に活用されることが多いためにそのように軸が設定されているのであって、根本的には上述の考え方が土台にあるのだろうと思います。
ただ、DiSC理論の軸の設定についてはまだ確証がないため、今後も研究を続けたいと思います。
今回の内容は、空間の捉え方の違い、時間の捉え方の違いについてです。
空間の捉え方、時間の捉え方が違えば、世界の捉え方が違ってきます。
そして、世界の捉え方が違えば、気質も違ってくる…前回はそんな話でした。
今回は、空間の捉え方の違い、時間の捉え方の違いをそれぞれ、もう少し詳しくご説明いたします。
まず、空間の捉え方の違いについてです。
上図の横軸が空間の捉え方の違いを表しています。
左に行けば、より局所的に、右に行けば、より全体的に、空間を捉えているということです。
局所的に、というのは、手の届く範囲で手作業をする場として空間を捉えているということです。
全体的に、というのは、手の届かないところから観察をする場として空間を捉えているということです。
人は実際には、局所的にか、全体的にか、どちらかだけで空間を捉えているわけではなく、両方の捉え方を混ぜ合わせています。
たとえば、台所で料理をしながら、少し離れたところにいる赤ん坊の様子に注意を向ける場合は、料理という手作業をする場として空間を捉えながら、赤ん坊の動きを観察する場としても空間を捉えています。
一般的に人は日常生活のなかで、空間のふたつの捉え方を適宜切り替えて生活しています。
したがって、ここで言う空間の捉え方の違いというのは、局所的か、全体的か、どちらか一方に完全に片寄っているのではなく、どちらがより得意なのかの違いだと思ってください。
ただし、脳血管障害の後遺症などで、どちらかの捉え方でしか空間を認知できなくなる場合はあります。
たとえば、手にしたスプーンは目で見てそこにあることが分かるけれども、少し離れたところにあるスプーンは認知できず、視界に入っていても、そこにあることが分からないといった具合です。
次に、時間の捉え方の違いについてご説明いたします。
上図の縦軸が時間の捉え方の違いを表しています。
上に行けば、より継次的に、下に行けば、より同時的に、時間を捉えているということです。
継次的に、というのは、次から次に流れてきては通り過ぎていくものとして時間を捉えているということです。
同時的に、というのは、時間が過ぎるということは、もの同士が関係を変えていくことだと捉えているということです。
継次的というのは、聴覚的、音楽的、未来的ということでもあります。
同時的というのは、視覚的、絵画的、過去的ということでもあります。
時間が音楽のように過ぎていく、というのはイメージしやすいと思います。
音楽は、音が次々と連続していくことで成立しています。音楽が流れているあいだはリズムや流れが重視されますから、ひとつひとつの音の意味や構造を考えている暇はありません。
時間を継次的(音楽的)に捉えている人は、その時その時の状況を立ち止まって考えることよりも、ノリや流れを重視して感性で即応することが得意です。
結果的に言動の辻褄が合わなくなってしまうこともありますが、音楽はその後も次々に流れ続けていきますので、気にしても仕方ないと前向きに考えて、次の状況に対応していく傾向があります。
そのため、ポジティブ思考を身につけている場合が多く、失敗をクヨクヨと引きずらない面もあります。
時間を同時的に捉える、というのは、少しイメージしにくいかもしれません。
時間を音楽のように連続したものとして捉えるのではなく、静止画が何枚も重なっていくようなものとして時間を捉えることが、同時的に捉えるということです。パラパラ漫画のようなイメージです。
時間を同時的に捉える人は、立ち止まって考えることが得意です。その時の状況を冷静に分析して、正確な答えを導こうとします。場合によっては、過去の記憶をさかのぼって参照することも出来ます。
一般的に記憶力が良くて、幼少期のことなど視覚的な一場面としてよく覚えていることが多いです。しかし、そのため、過去の出来事にとらわれやすく、後悔や恨みの念にとらわれてしまいがちです。
瞬時に判断を下すのは苦手です。また、気軽に雑談をするなどして、その場の雰囲気に乗っかるのが苦手なこともあります。極端な場合は、空気が読めない人とレッテルを貼られてしまうこともあります。
しかし、そういった面は、年齢を重ねて経験を積み、過去の失敗の反省をすることで、後天的に克服されていく場合が多いです。
時間の捉え方については、継次的なのか、同時的なのか、どちらかにはっきりと分かれるようです。中間的に両方の捉え方を混ぜ合わせて使うことはないようです。
その点は、空間の捉え方の場合とは違います。
したがって、空間の捉え方の違いによる気質の違いよりも、時間の捉え方の違いによる気質の違いの方が、はっきりとした違いとして表れます。
たとえば、同時的(視覚的、絵画的、過去的)に時間を捉える気質の人が、無理をして後天的にポジティブ思考を身につけたとしても、どこかチグハグな感じがして、しっくりとこなかったりします。
以上、空間の捉え方の違い、時間の捉え方の違いを、それぞれ少し詳しく解説いたしました。
人には生まれながらに得意な呼吸の仕方があります。
得意な呼吸のタイプは、全部で4つに分類されます。
そして、4つの呼吸タイプと、前回までお話してきた4つの気質は、相関関係にあります。
つまり、「この呼吸タイプの人は、こんな気質を持っています」と言うことができるのです。
それはなぜなのでしょうか。今回はそのことについて解説していきます。
まず、呼吸の仕方が変わると、姿勢が変わります。
それは、呼吸の仕方の違いによって、胸郭の使い方が違ってくるからです。
また、胸郭の使い方が違ってくると、首の傾きや方向、そして肩甲骨のおさまる位置が違ってきます。
首の傾きや方向が違ってくると、視覚や聴覚の働きが違ってきます。それに加えて、顔面や首の触覚の働きも違ってきます。
肩甲骨のおさまる位置が違ってくると、両腕の触覚の働きが違ってきます。
また、胸郭の使い方が違ってくると、胸の触覚の働きも違ってきます。
以上をまとめると、次のようになります。
呼吸→胸郭(姿勢)→首の傾き、方向→視覚、聴覚、顔面や首の触覚
呼吸→胸郭(姿勢)→肩甲骨の位置→両腕の触覚
呼吸→胸郭(姿勢)→胸の触覚
つまり、呼吸の仕方が違ってくると、視覚の働き、聴覚の働き、両腕などの触覚の働きが違ってくるということです。
視覚、聴覚、触覚のことをまとめて、知覚(ちかく)と呼びます。
知覚には、ほかに嗅覚や味覚などがあります。
しかし、人類にとって特に重要な知覚は、視覚、聴覚、それに両腕などの触覚です。
なぜなら、人は主に、視覚、聴覚、両腕などの触覚を使って外界の情報を受け取り、世界がどのようなものかを捉えているからです。
ここで言う「世界」とは、前回までに取り扱ってきたものと同じで、空間と時間が組み合わされたもののことです。
人は知覚を使って、空間がどのようなものかを捉え、時間がどのようなものかを捉えます。
空間がどのようなものかを捉えるときには、視覚と両腕などの触覚が主に使われます。
時間がどのようなものかを捉えるときには、視覚と聴覚が主に使われます。
それらの知覚の働きが違ってくれば、空間の捉え方、時間の捉え方も違ってきます。
上図において、横軸が空間の捉え方の違いを表していて、縦軸が時間の捉え方の違いを表しています。
空間の捉え方の違いを表している横軸の場合、視覚と両腕などの触覚の働きの違いにより、局所的に捉えるのか、全体的に捉えるのかが違ってきます。
時間の捉え方の違いを表している縦軸の場合、視覚と聴覚の働きの違いにより、継次的に捉えるのか、同時的に捉えるのかが違ってきます。
このあたりは、前回の繰り返しになりますが、横軸と縦軸により4つの部屋が仕切られているので、世界の捉え方は4つのタイプに分けられます。
そして、これも前回までに述べたことですが、世界の捉え方が違えば、気質も違ってくるということで、気質タイプも4つに分けられることになります。
以上をまとめると、次のようになります。
呼吸→胸郭(姿勢)→知覚→世界(空間、時間)の捉え方→気質
こういう流れで、4つの呼吸タイプと4つの気質タイプはつながっています。
今回は呼吸タイプと気質タイプのつながりについてざっくりと解説いたしました。
ざっくりとした解説でしたので、「どのような姿勢が、どの知覚にどのような影響を及ぼすのか」といった、より詳しい解説は省略いたしました。
今回は4つの呼吸タイプ=4つの気質タイプについて、タイプ別の解説をいたします。
上図が4つの気質タイプを表しています。
まずは、左上からです。
【即応できる演奏家タイプ】
・ 空間を局所的に捉え、時間を継次的に捉える傾向が強い。
→ 次々と目の前にやってくる物事を次から次へと即座にクリアしていくのが得意。
→ 逆に、長期的な計画が苦手で、視野も狭くなりがち。
→ 物事はトライ・アンド・エラーで学んでいくものと思っているので、失敗を恐れない傾向がある。
・ コミュニケーション能力に長けている。
→ 他人と関係を持つことが好き。独りでいる時は考え事をするより、何か作業をしていることが多い。
・ 対応する呼吸タイプは背中呼吸。
次に、右上です。
【情熱的な指揮者タイプ】
・ 空間を全体的に捉え、時間を継次的に捉える傾向が強い。
→ 次々と目の前にやってくる状況を全体的に感じ取って、即座にまわりに指示を出せる。
→ しかし、発想が人の感情に訴えかけるものであることが多く、その場しのぎになる傾向がある。
→ 失敗を失敗と考えない傾向にある。ポジティブな思考傾向。
・ エンターテインメント能力に長けている。
→ まわりの人間の注目を浴びるのが好きで、なおかつ、その場にいる人全員を楽しませたいという思いが強い。
・ 対応する呼吸タイプは肩甲骨呼吸。
そして、右下です。
【準備万端な写真家タイプ】
・ 空間を全体的に捉え、時間を同時的に捉える傾向が強い。
→ 過去の事例などを引き合いに出して、比較検討しながら、さまざまな判断を行う。
→ 逆に、瞬時の判断が苦手で、行動に移すのも遅くなりがち。
→ その状況でのベストな判断をしたいと思っているため、失敗を恐れる傾向にある。
・ 比較検討能力、類推能力に長けている。
→ 頭の中に材料を詰め込んで、ひとりで比較検討(類推)をするのが好き。人との交流も嫌いではないが、頭の中では別のことを考えていることが多い。
・ 対応する呼吸タイプは鎖骨呼吸。
最後は、左下です。
【冷静な画家タイプ】
・ 空間を局所的に捉え、時間を同時的に捉える傾向が強い。
→ ひとつの物事に時間をかけて、高い完成度で仕上げるのが得意。
→ しかし、要点をざっくりと捉えるのが苦手で、完成までの時間が非常に長くなる傾向がある。
→ 失敗はあってはならないことと捉えて、何度も手直しする傾向にある。
・ 計算能力、分析能力に長けている。
→ 数字に強く、データ管理が得意。コツコツと地道に積み上げていくことへの労力をいとわない。
・ 対応する呼吸タイプはみぞおち呼吸。
以上、4つの呼吸タイプ=4つの気質タイプについて、それぞれ解説いたしました。
それぞれの相性などの解説や事例の紹介などは、今回は省かせていただきました。