【肩関節】強靭さと繊細さの絶妙なバランス
人類の肩関節は絶妙なバランスでできています。
二足直立歩行をしているので、腕の重みが肩関節にかかります。
脳梗塞の後遺症などで肩まわりの筋肉が弱くなってしまうと、腕の重みだけで脱臼してしまうこともあります。
ですので、肩関節のまわりにはある程度の強さの筋肉が必要になります。
また、人類は指先を細やかに使う必要があります。
指の動きに直接的に関わる筋肉は、肘から先にあります。
しかし、だからと言って肩の関節は指の動きと無関係というわけではありません。
筋肉の動きはそれぞれが独立しているのではなく、つながりがあります。
指の動きと肩の関節にも深い関連があります。
(さらには、肩関節まわりの筋肉は首や背中や胸などの筋肉と深いつながりがありますし、首や背中や胸の筋肉はさらに他の筋肉へとつながっていきます。)
そのため、指先を繊細に動かすためには、肩の関節にも相応の繊細さが必要になります。
肩の関節には相反するふたつの要件があることになります。
・簡単には脱臼しない強靭さ
・指先の繊細な動きを可能にする繊細さ
脱臼を防ぐためにガチガチに固めてしまうと、指の繊細な動きを阻害してしまいます。
逆に、指の繊細さを優先するかたちで関節が緩くできていたら、ちょっとしたことで脱臼してしまいます。
この強靭さと繊細さの絶妙なバランスが維持できていれば、肩関節まわりの不調は起こりません。
逆に言えばそのバランスが崩れたときに、不調が出てくるということです。
たとえば四十肩や五十肩と呼ばれる不調は、関節の強靭さが繊細さを大きく上回ってしまった結果出てきます。
肩関節まわりの筋肉や組織が固くなり、その可動域が狭くなったうえで(繊細さが失われたうえで)、それでも日常生活に必要な範囲で肩を動かし続けていると、関節面同士や周辺の組織がこすり合わされたり、限界以上に引き伸ばされたりして、少しずつダメージが蓄積していきます。
その結果、肩関節のまわりの筋肉や組織が慢性的な炎症を起こし、痛み出すことになってしまいます
それが四十肩、五十肩と言われる症状です。
予防や治療としては肩関節まわりの筋肉をやわらかくすることが重要なのですが、炎症が強く出ているときには直接的な刺激は禁物です。
炎症がさらに強まってしまう可能性が高いからです。
そういうときには、直接的に肩関節にアプローチするのではなく、まわりの筋肉をほぐしていくことになります。
そもそも、肩関節まわりの筋肉、組織が固くなった原因が、ほかの筋肉にあることも多いので、まわりからアプローチしていく観点はもとから必要になります。
よくあるパターンは、肩甲骨まわりの筋肉が固くなっているというものです。
次に多いのは、肘まわりの筋肉が固くなっているパターンです。
まずは、肩甲骨まわりの筋肉が固くなって、肩甲骨の動きが悪くなることで、肩関節に負担がかかるというパターンです。
ここでは詳しい説明は省略いたしますが、パソコン作業、長時間のテレビの視聴、長時間のドライブなど、同じ姿勢で長時間いることが原因であることが多いです。
次に、肘まわりの筋肉が固くなるパターンですが、これは(パソコン作業を含む)手作業をよくされる方、農業従事者や工場労働者の方などに多いです。
最近はスマホをよく触られる方にも多いように思います。
この場合、肩関節よりも末端にある指先の緊張が、肘関節を経て、肩関節の痛みに影響しているというわけです。
年齢とともに、関節の動きは固くなるうえに、慢性的な運動不足になる傾向があります。
全身的に筋肉や組織は固くなっていくのですが、肩関節まわりに不調が出てきやすいのは、肩関節が他の部位に比べて絶妙なバランスで成り立っているため、バランスが崩れやすいからです。
ちょうどその時期が四十代や五十代に出てきやすいために、四十肩とか五十肩と呼ばれているわけです。
人によっては三十代で出てくることもありますし、逆にもっと後で出てくることもあります。
加齢による変化なので、ある程度は仕方のない面もありますが、予防をすることで発生を遅らせたり、痛みをやわらげたりすることができます。
運動不足が原因のひとつではありますが、ガチガチに固くなってしまった筋肉をいきなり動かすのは逆効果になる危険性があります。
まずはマッサージを受けたり温泉などであたためたりすることで、筋肉をゆるめることから始めるのが安全策となります。
痛みなどのストレス因子は機能回復を阻害します。