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相性を超えていけ

 人と人のあいだには相性があります。

 マッサージや指圧などの徒手療法は人と人のあいだで行われますので、当然そこにも相性があります。

 複数の施術師のいる施術所であれば、患者さんから「相性が合わないから」との理由で担当を変えられたりします。

 患者さんの健康状態によって相性の幅には差があります。

 寝たきりの患者さんの場合、相性の幅は狭いです。

 廃用症候群(長期にわたって筋肉を動かさないことによる心身の不調)になっている方がほとんどですので、どんなに下手な施術(身体にダメージを与えるようなものでない限り・・・しかし、それはすでに施術とは呼べませんが)でも何もしないよりはマシですので、相性が問題になることはほとんどありません。

 ただ、神経痛が激しく出ている場合や視床痛(脳血管障害の後遺症のひとつ)が出ている場合のように、どうしたって痛みが出る時はその限りではありません。

 逆に、寝たきりの方に対して比較的健康と言えるスポーツ愛好家を施術する時には、相性の幅が広くなります。

 なぜ肩が痛くなるのか、なぜ腰が痛くなるのか・・・などを読み解くには、その患者さんの身体のクセや傾向を見抜く必要があります。

 その時、施術師側が患者さんと同じ身体傾向やクセを持っているか、もしくは、患者さんの身体傾向をイメージできるかしないと、的確な施術ができません。

 自分と違う身体傾向やクセを持っている方に対して、相性の問題は色濃く出てきます。

 寝たきりの患者さんの廃用症候群に対応するときには、身体傾向やクセを読み取る必要性はほとんどありません。

 それが寝返りの訓練や座った状態を保持する訓練を行うときには、すこしその必要が出てきます。

 起立訓練や起立保持訓練、歩行訓練と進むにつれて、身体傾向やクセを知ることは重要になっていきます。

 つまり、健康度(と、ざっくり書いてしまいますが)が高くなればなるほど、身体傾向やクセを知る必要性が高まり、相性の幅が広くなります。

 では、相性の問題を超えていくためには、どうすれば良いのかと言うと、すでに答えは出ているのですが、自分とは違う身体傾向やクセを知ることが重要だということです。

 これは、施術の場だけの話ではなくて、人間関係全般に言えることです。

 身体と心はつながっていますので、身体傾向は思考傾向ともつながっているわけです。

 自分と違う身体の使い方をして、自分と違う考え方をする、そんな人間が世界にはいっぱいいるということを知って、それを学ぶことが、相性を超えていくコツです。

 人間関係から来る葛藤は、価値観を相手に投影することから始まることが多いです。

 価値観が違う相手がいるときは、その価値観を認めて「へぇー、そんな考え方をするんだな」と内心思っておく、というのが良いのです。

 話を施術に戻しますと、患者さんの身体傾向を学び、自分の身体にそれを投影してみるのも手です。

 その状態で出てくる手技が、実は患者さんが求めているものだったりします。

 本来得意とする手技ではないため、付け焼刃的なものとなりますが、それでもそれを続けているうちに、十分現場で通用するものへとなっていきます。

 そこで注意することは、自分の本来の身体の使い方を忘れてしまわないことです。

 人間は何にでも慣れてしまうので、他人の身体傾向を真似てつづけているうちに、それが自然なものと勘違いしてしまいます。

 プロのスポーツ選手でも極度のスランプに陥ってしまうことがあるのは、そんな仕組みからです。

 自分と身体傾向の違うコーチからの指導で、自分本来の身体傾向を忘れてしまうということです。

 施術師の理想として、ここにまたひとつのイメージを提示するとなると、「すべての人の身体傾向を知っていて、それを自分に投影することができる」ということになります。

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