明治期の三大健康法
明治期の三大健康法と言うと、「岡田式呼吸静坐法」「二木式腹式呼吸法」「藤田式息心調和法」が有名で、3つの健康法のすべてが呼吸法となっています。
それぞれの創始者は、岡田虎次郎、二木謙三、藤田霊斎で、3人ともが幼少期に病弱な体質だったとのことです。
岡田虎次郎は山籠もりの最中に、その呼吸法をひらめいたそうで、後になって白隠禅師(臨済宗中興の祖と称される江戸中期の禅僧)の教えと内容が同じであることが分かって、自信を深めたとのことです。
二木謙三と藤田霊斎は、白隠禅師の著作を読んで、そこから自身の呼吸法を作り上げたそうです。
白隠禅師もまた、幼少期に虚弱だったそうで、3歳になるまで立つこともできなかったと伝えられています(明治期の3人と白隠禅師が共通して、幼少期の虚弱体質に悩まされていたというのは興味深いところです)。
白隠禅師は著書の『夜船閑話』のなかで、『荘子』(中国の紀元前の思想家である荘子の著書とされる道家の文献)の大宗師編に触れています。
その内容は、「眞人の息は是れを息するに踵を以てし、衆人の息は是れを息するに喉を以てす」というもので、その意味は「真人はかかと(足裏)で呼吸をするが、一般人はのどで呼吸をする」となります。
こうして並べていくと、呼吸法は人類が脈々と受け継いできた健康法であるかのように思えてきますが、おそらく実際は、呼吸法を使って健康になるという発想は、人類が共通して持っているものなのだと思います。
呼吸法と健康のあいだには普遍的な関係があって、その関係が普遍的であるがために誰もがひょんなことから(幼少期から虚弱体質に悩まされているのであれば、なおさら)気付き得るものなのだと思います。
ただ、その呼吸法の技術的な違いとして、浅いのか、深いのか、という差はあると思います。
ヨーガや気功などの技術的な奥深さに比べると、明治期の三大健康法である3つの呼吸法は、比較的に浅い技術体系しか持っていないと言えると思います。
しかし、浅いがために、取り組みやすいという利点もありますし、また、気功で言うところの「偏差」といった副作用に悩まされる危険性が低くなるということもあります。
ヨーガや気功が瞑想をその主目的としているのと違い、単なる健康法として用いるのであれば、かえってその技術的な浅さが、取り組みやすく副作用が少ないという利点になるというわけです。
山根式四象調息法を「気功のようなもの」として提示しているのは、そこにこそその理由があるのであって、どうやら今回の記事は、妙な自己弁護のために書かれたものだったというのが結論になるようです。