リハビリテーションとリコンディショニングの違い
リハビリテーションもリコンディショニングもいろんな意味で使われているようで、人によっては、医師や理学療法士などの資格を持っていないので、職業的にリハビリテーションという言葉を使うことができず、苦肉の策として代わりにリコンディショニングという言葉を使っていると明言されている方もいらっしゃいます。
そのあたりは、あん摩マッサージ指圧師の資格を持っていないので、整体、ボディケア、リラクゼーション、カイロプラクティックなどの言葉をマッサージの代わりに使うのと同じことですね。
しかし、リハビリテーションという言葉を職業的に使うことのできる医師や理学療法士でも、リコンディショニングという言葉を使っていることから、もともと言葉の定義に違いがあるはずであって、資格の所持の有無だけが問題ではないはずです。
WHO(世界保健機関)によるリハビリテーションの定義は以下のようになります。
『リハビリテーションは、能力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。
リハビリテーションは障害者が環境に適応するための訓練を行うばかりでなく、障害者の社会的統合を促す全体として環境や社会に手を加えることも目的とする。
そして、障害者自身・家族・そして彼らの住んでいる地域社会が、リハビリテーションに関するサービスの計画と実行に関わり合わなければならない』
リコンディショニングについては、しっかりとした定義が確立されているわけではないようで、ネットで検索してみても、リハビリテーションほどには共通した見解があるわけではないようです。
ざっと目を通したなかで、函館整形外科クリニックのサイトでの説明が分かりやすかったので、引用いたします。
『リコンディショニングは定義された用語ではありませんが、社会生活やスポーツ活動に復帰する上でとても大切な過程です。リコンディショニングは高い身体機能の回復、ケガや疾病の予防、後遺症対策などがこれにあたります。つまり、最高のパフォーマンスの発揮に必要な全ての要因を、再び望ましい状態に回復、調整させることですが、これはその競技あるいは種目に非常に近いスポーツ特異的なスキルも含みます』(引用元:http://hakodate-seikei.com/rehabilitation/reconditioning.html)
上記の二つの定義に則った上で、比べてみますと、リハビリテーションとリコンディショニングには重なる部分もあるようですが、やはり違いがあるようです。
リハビリテーションは、障害者が社会生活(そこにはスポーツが含まれる場合もあるが、必須ではない)に復帰することであり、リコンディショニングは高い身体機能の回復(スポーツに代表されるような)を意味しているようです。
ケガをしたプロスポーツ選手にとっての社会生活の復帰が、高い身体機能の回復を指すこともあるでしょうから、リハビリテーションはリコンディショニングを包含する上位概念ということになりそうです。リコンディショニングはリハビリテーションの一部分ということですね。
先のリコンディショニングの定義の引用元である函館整形外科クリニックのサイトによれば、 まず、大きな概念としてリハビリテーションがあって、その下に3つの概念が段階的にあるようすです。
メディカル・リハビリテーションがケガや疾病から日常生活へと回復することであり、アスレチック・リハビリテーションが、日常生活レベルからスポーツができるまでに回復することであり、リコンディショニングがスポーツで最高のパフォーマンスを発揮できるまでに回復することということになります。
その認識が一般的なものかどうかは別として、非常に分かりやすい捉え方ですっきりとしていると思います。
リハビリテーションとリコンディショニングという言葉を比べることで分かってきたのは、私が当初思っていたよりも、リハビリテーションという言葉には広い意味があるということです。
一般的にリハビリテーションと言うと、先の例で言うところのメディカル・リハビリテーションを指すことが多いですが、広い意味では、スポーツの現場でのトレーニングまでもがリハビリテーションに含まれてくると言えるのかもしれません。
ただ、WHOの定義にある通り、スタートには障害があることを思い出さなくてはなりません。
仮に、スポーツ現場でのトレーニングがリハビリテーションに含まれるとしても、その前提としてケガや疾病を原因とする何らかの障害があり、そこからの回復を意図したものでないのであれば、それはリハビリテーションの一環とはならないわけです。
ですので、まったくの健康体のスポーツ選手が筋力増強のためにおこなうトレーニングは、この場合、リハビリテーションとは呼ばれません。
それに対して、脱臼を繰り返す肩関節への予防のためのトレーニングはリハビリテーションになるわけです。
それでは、肩こりや腰痛を予防するためのトレーニングの場合はどうでしょうか。
ここまでくると、今度は障害に対する定義が必要になってくると思いますが、それはまた別の話題(亜急性理論の闇が見えてきます)になってくると思いますので、ここでは差し控えたいと思います。