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「ほどほど」が一番難しい

 何事もほどほどが一番だと思います。バランスが一番大事だと思います。

 でも、それが一番難しいことでもあります。

 たとえば「運動はほどほどにしましょう。やりすぎは禁物です」と言った時に、具体的にそれがどの程度の量のことを言っているのかを判断するのはそれぞれの裁量にゆだねられているわけですし、適量がどの程度なのかもその人の身体状況によって変わります。さらに、同じ人でも日によって体調は変動しますので、その日の体調によって「ほどほど」の指す分量が変わってくることになります。

 重要になってくるのは判断するその人の感性だと思います。

 ただ、重要なのが感性だとしても、まったく何の判断基準もないのでは難しいと思うので、ある程度の取っ掛かりになる理屈が欲しいところです。

 人によっては、「物事を判断するのに理屈は邪魔になるだけだ。直感がすべてだ」と言われるかもしれません。もしくは、逆に「理屈がすべてだ」と言われる人もいるでしょう。

 しかし、そこは発想法が人それぞれに違うということだと思います。

 患者様に直接お話する時には、その方に合わせて物事の考え方や捉え方をお話するのですが、ここでは私個人の方法を述べてみたいと思います。

 【ステップ1】 何かを判断する場合、まずは、状況の把握に努めます。主観を排してなるべく客観的に状況を把握します。

 【ステップ2】次に、「こうしたい」「ああしたい」という 自分の動機を把握するように努めます。その時、結果がどうなるのかはとりあえずは横に置きます。例としては、「面白くしたい」とか「かっこよくしたい」とか「納得感のあるものにしたい」とかです。

 【ステップ3】 そして最後に、客観的な状況と自分の動機のあいだでバランスをとります。

 あるテーマの周辺の状況をとことんまで調べて、風呂敷を広げまくり、ある程度まで広げきったと思われた後は、集めた情報のなかで、どういった組み合わせをするのが一番面白く感じるか、もしくは、しっくりと感じるか、ということを探っていくというやり方です。

 「客観」と「動機」のあいだでちゃんとバランスが取れたなら、「結果」はおのずと付いてくるように思います。

 また、「主観」も後から付いてくるので、自分がどういうスタンスでその件について取り組んでいたのかが、最後になってようやく分かるなんてことがよくあります。

 ただ、このやり方ですと時間がかかってしまうので、時間が限られている時には、「主観」と「結果」のあいだでバランスを取っていく方が良いように思います。

 つまり、あるテーマに対して、どういうスタンスで取り組むのかはっきりとさせたうえで、どういうゴールをするのか、あらかじめイメージするというやり方で進めた方が、早い判断ができるということです。

 そのあたりは一長一短で、スピードを求めるとなると、どうしてもこじんまりとした物しか出てこないですし、スケールの大きな物、発想の豊かな物を出してこようと思うと、ある程度の時間は必要になってきます。

【個人的用語集】

※客観:厳密には不可能なもの。どうしたって自分の観方は入ってしまうもの。そう口にするときには、いつも幾らかの後ろめたさを感じるもの。他人の口から聞いたときには、まず疑いの対象となる。不断のチューニングの必要なアンテナ。

※結果:見えていないと不安になるもの。しかし、逆に最初から見えてしまうと意気阻喪させるもの。見切り発射ぐらいが丁度いいとはいえ、あらぬ方向に打ち上げられるロケットに関わらなくてはならないことほどにストレスのかかることはない。

※主観:スタイル。スタンス。シンプル・イズ・ベスト。表面的な装飾よりも、本質的な構造を優先したい。自然とコスト・パフォーマンスがよくなる。吝嗇ではないと声を大にして言いたい。天邪鬼な気質を出来る限り抑えること。

※動機:生きる活力の元。納得感を得たい。納得できるものであれば、苦労も楽しい。納得できるから人生は楽しい。納得感を他人と共有できると、もっと楽しい。ただ、独りよがりになる危険性はつねにある。手綱は手放してはならない。

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