自分と違うタイプの指導者から何が学べるのか
自分とまったく違う呼吸タイプと思われる日野晃(ひのあきら)先生だからこそ、ワークショップを受けてみたいと思い、先日大阪府立江之子島文化芸術創造センターにて行われた日野先生のワークショップに初めて参加いたしました。
ちなみに、日野先生の呼吸タイプは少陽タイプと思われ、私の呼吸タイプは少陰タイプです。
四象調息法の考え方からすると、呼吸タイプが違うことで、身体の使い方にも違いがあり、さらには、物事のとらえ方、考え方にも違いがあるはずです。
日野先生はまったく違うタイプの私をどのように指導するのか、大変興味がありました。
それと言うのも、私は、自分と同じタイプの患者さんの方が、身体の状態を理解しやすい分、施術や指導がしやすいように思うので、違うタイプの患者さんに対する施術に何か参考できるものが得られるのではないか、という思いがあったのです。
この課題に対する答えは、ワークショップが始まってすぐに、得ることができました。
直接的に質問したわけではなく、何かの話の流れで日野先生がおっしゃったのは、「自分のやり方で自分のやりやすいようにやっていても仕方がない。このワークショップは俺のやり方を学ぶ場である。自分のやり方を壊して、他人のやり方を取り入れることも大事なこと」という主旨のことでした。
このご発言は本当に参考になりました。内容を極端にまとめてしまうと、「このやり方が苦手だろうが関係ない。俺に合わせろ」ということです。
私がそのようなスタンスで患者さんに接することは考えられないですが、日野先生の考え方には完全に同意いたします。
自分の考え方をしっかりと押し出すことがまず大事で、そのことで相手に拒否されることがあったとしても、その時はコミュニケーションをしっかりと取って、何がその拒否感を生んでいるのかを探り出していく。そうすることで、見えていなかったものが見えてきて、新たな認識を手に入れることが出来れば、それはそれでひとつの成長、前進と言えるじゃないか。
そんなポジディブなメッセージがそこには込められているように感じました。
もともと、私は「自分と違うタイプの指導者から何が学べるのか」という課題を持ってワークショップに参加していたので、そこに対する日野先生の考えを想定外に早々に聞けて、それだけでもう今日はお腹いっぱい、参加した甲斐があったと思いました。
あとは、日野理論に沿って、自分のやり方を壊して、本来とは違う身体の使い方を取り入れた時に、どういう変化が身体に起きるのか、どういう感覚が出てくるのかを観察することと、できれば、直接日野先生から何がしかの合気道のような術をかけていただき、どんな感じがするのかを経験したいというのが、当初の課題のなかで残っていました。
前者の課題は問題なくクリアできると思っていましたが、後者の術をかけていただきたいという課題は、なかなかにハードルが高いように思っていました。
しかし、その時は唐突にやってきたのです。
日野先生が私に羽交い絞めにしてみろと、おっしゃるわけです。
「ついに来た!」と内心色めき立ちました。
その前に、ワークショップの常連の方を相手に同じことをされているわけです。
日野先生がちょっと胸を動かすと、「ウグッ!」常連の方の表情に苦悶の色が!
ほどなくスルリと脱出される日野先生。
こんなこともありました。一人に羽交い絞めをさせて、もう一人に両足を抱えさせます。
日野先生の身体は完全に宙に浮いてしまっています。
それでも日野先生がちょっと身じろぎをするだけで、「ウググッ!」抱えている二人に苦悶の表情が!
羽交い絞めしている方は体勢をくずして、足を抱えている方はゴロンと転がされてしまいました。
すごい! DVDで見たことある! あれって受けてる人はどんな感覚なんだろう!?
それを体験できる時が来たわけです。内心「ヒャッハー!」状態でした。
早速、日野先生を羽交い絞めに。
来るか。
来るか。
「ウググッ」が来るのか。
ん?
来ない。
まだか。
あれ?
日野先生が振り返り・・・
「な?」
満面の笑みをたたえて。
・・・
結局のところ、私が思いますに、日野先生は術をかける気ではなかったんでしょうね。
日野理論で重視されている胸骨の動きを体験させるために、羽交い絞めにさせたのだろうと思います。
期待していただけに、頭の中がポカーンとしてしまいました。
満面の笑みで振り返った日野先生に、私は多分相当な間抜け面で「はあ」とか何とか答えたように思います。
術こそ受け損なったものの、本当に有意義なワークショップだったと思います。
時間の都合上、1コマ2時間しか参加できませんでしたが、次の機会には是非とも1日フルに参加したいと思います。
そして、その時には、あの「ウググッ」を体験できればなあ、と願っております。
ところで、自分と違うタイプのやり方を実践したことで、どのような変化が私の身体に起きたかと申しますと、数日は今まであまり使っていなかった筋肉が筋肉痛を起こしていました。意外だったんですが、三角筋や僧帽筋という体幹部の上部にある大きな筋肉に特に痛みがでました。
それは、使っていない筋肉を激しく動かせばそうなるでしょうから、特別にどうということもありません。
身体に起こった変化のなかで面白かったのは、日頃よく使う手技である拇指圧迫が、微妙にやりにくくなっていたことです。
以前の記事でも書いたのですが、私の中で、呼吸タイプと手技のあいだには一対一の対応関係があると考えています。
私のタイプである少陰タイプの場合には拇指圧迫が得意であるという対応関係なんですが、それがやりにくくなっていて、少陽タイプと対応関係にある拇指揉捏はやりやすくなっていました。微妙にですけどね。
それも、意識して胸郭の使い方を元の自分のやり方に戻していくにつれて、戻っていきました。それでも、3日間くらいは微妙な身体のなかのラインのズレを感じていましたが。
そういうこともあって、直接的に日野先生のやり方が自分のなかに残るということは無さそうに思っていますが、私にとって一番理解しにくい呼吸タイプである少陽タイプのことが、かなり理解しやすくなりました。
術を受けられなかったのは、やはり残念ではありますが、そうだとしても、何よりも「自分と違うタイプの指導者から何が学べるのか」ということについて、一つの視点を得ることが出来たのが今回のワークショップでの収穫として大きかったです。
日野先生、スタッフの皆様、参加者の皆様、ありがとうござました。またの機会によろしくお願いいたします。