ドローインについて
四象調息法のキモは、腹横筋に力が入るかどうかにかかっていると現状では考えています。
ご指導させていただくうえで、腹横筋の感覚を持っていただけるかどうかが、進行上一つのボトルネックになっております。
四象調息法の根本的な考え方自体が、「腹横筋に力を入れやすい呼吸法は人によってパターンが違っていて、おおむね4つのパターンに分類される」というもので、実際にご自身にあった呼吸法を行う中で、腹横筋の感覚をすぐにつかめる方もいらっしゃいますが、なかなかそうはいかない方もいらっしゃいます。
そういった患者さんに腹横筋の感覚を持っていただくためには、何かもう一つわかりやすい方法がほしいところです。
そこで、ドローインという手法があることを思い出しまして、ネットで検索したところ、かなりの数のサイトがヒットしました。
私が思っていたより、ずいぶんと広まっている手法だったんですね。ドローインって。
ついでに、「腹圧」や「腹横筋」についても検索してみると、これもかなりの数のヒットがありました。
文脈を読んでみると、「腹圧を高めるためには、腹横筋を鍛える必要があり、腹圧を高めると腰痛予防になる」という内容が大半です。
四象調息法も同じ考え方で作られたものですが、それはすでに一般的に認知されている考え方だったんですね。
ただ、一般的に認知されているとは言っても、それは施術師なりスポーツトレーナーなり理学療法士なりのあいだでの話であって、健康に特別な思い入れのない方にはまだまだ知られていない考え方のようです。
それで、ドローインについて調べてみたのですが、ちょっと私の施術には使いづらいように思いました。
その理由は、ドローインのやり方がひとつしかないので、呼吸タイプを4つに分類するという四象調息法との親和性が低いということがまず挙げられます。
次に、これは四象調息法と共通の問題点になりますが、ドローインを行ったとしても、必ずしもすぐに腹横筋の感覚が持てない人が持てるようになるわけではないし、指導する側の人間が注意深く見ていないと、クライアントが出来ていないものを出来ていると勘違いしたまま、効果の薄い方法で続けてしまう危険性があるということがあります。
四象調息法にしてもドローインにしても、もともと腹横筋の感覚を持てている人は、より鍛えることができますが、感覚を持てていない人のなかには、間違った方法を正しいものと認識して、それを続けてしまう危険性があります。
その危険性を回避するためには、指導員がそれらの方法を正確に出来ているのかどうかをきちんと判定してお伝えすることが重要だと思います。
いくつかのサイトで、ドローインのセルフチェック法として、上前腸骨棘(骨盤の上前方にある骨のでっぱり)の内側が膨らむかどうか、というのが挙げられていますが、そこは腹横筋がそんなに働いていなくても、いわゆる腹式呼吸が出来ていれば膨らんでしまう箇所なので、チェックポイントとしては不適格だと思います。
セルフチェック法ということで言えば、むしろ上前腸骨棘の5cmほど上のお腹のあたりの方がチェックするのに有効だと思います。
しかし、そこにしても、いわゆる腹式呼吸が出来ていれば、ある程度膨らんできますので、一般人の方がいきなりそこを触って判定するのは難しいと思われます。
より正確にセルフチェックをするのであれば、指導員に実際に腹横筋に力を入れたり緩めたりしてもらって、それを触るという方法をとった方が良いと思います。
腹横筋に力が入る状態になると、上前腸骨棘の5cmほど上の腹部が、どの程度の硬さになるのかを感覚として覚えていただいて、それをひとつの判断基準にするということです。
しかし、上前腸骨棘の5cmほど上の腹部には、腹横筋のほかに腹斜筋もありますので、ちょっと腰をひねる動きをするだけで、すぐに筋肉が固くなってしまうので、その方法でも100%の正確さで判定できるわけではありません。
腹部の硬さでセルフチェックをする際には、腰をひねるなどのほかの動きをしないことが重要です。
結局のところ、腹横筋の感覚をつかみやすい簡単な方法というのは、まだ発見できずにいますが、比較的に正確な方法としては、指導員に実際に腹横筋の力の入った状態と抜けた状態を触らせてもらって、それをひとつの判定基準としてセルフチェックをしながら、四象調息法なりドローインに取り組むというのが、現状では最善策のように思います。
私自身、なかなか腹横筋の感覚をつかみにくい患者様には、私のお腹を衣服ごしに触っていただくようにしています。
現在の体脂肪率が18%ぐらいなんで、ちょっとお腹がタプタプしていて恥ずかしいんですけどね。