呼吸法と手技は対応している
四象調息法の4つの呼吸タイプ(少陰タイプ、少陽タイプ、太陰タイプ、太陽タイプ)において、人によって得意な呼吸タイプが決まっているのですが、得意でない呼吸タイプもやろうと思えばできます。
私自身が得意な呼吸タイプは少陰タイプなんですが、4つのタイプすべてを指導する立場ですので、他のタイプの呼吸法も日常的に練習しております。
それで、つい先日ふと思い出したのですが、前の勤め先の治療院で、施術師によって得意な手技の種類が違うという内容の社内講習会を開催したことがありまして、その当時はまだ四象調息法がはっきりとしたものになっていなかったので、それとは直接的には関係のないものとして話していました。
そこで、思いついたのが、得意な呼吸タイプと得意な手技というのは、一対一で対応しているのではないか、という仮説です。
早速、中和医療専門学校での修業時代に、当時教頭だった右田先生からボロカスにダメ出しされた把握揉捏法を、それに対応すると思われる太陽タイプの呼吸法を行いながらやってみることにしました。
すると、びっくりするぐらいスムーズに手首が動くではないですか。あら、不思議。当時は、どうやっても手首が動かなくて難儀していたのですが・・・。
右田先生は非常に厳しい指導をされる先生でしたが、私はあまりドヤされた記憶がありませんでした。指導されるにしても、微調整程度のことだったと思います。師匠とお呼びするほどには深い関わり合いはなかったですが、未だに私のなかでは、ひとつのモデルとして頭の中に右田先生の立ち居振る舞いが明確なビジョンとして残っております。
そんな右田先生から唯一ドヤされたことがありまして、それが先にも述べました把握揉捏法の指導時でした。
まったく動かない私の手首をつかんで、「こうだ! こうだ!」と動かしてくださるんですが、自分の感覚としてそれを動かすことがどうしてもできずに、「動きません!」と答えるしかありませんでした。
そんな懐かしい思い出が嘘だったかのように、スムーズに手首が行ったり来たりできるんですね。念のために、もともとの呼吸タイプである少陰タイプに戻して動かしてみると、やっぱり元のガタガタのぎこちない動きに戻ります。身体がその動きを拒否しているんです。
その他の呼吸タイプと手技も含めて、まとめてみますと下記のようになります。
・少陰タイプ⇔拇指圧迫法
・少陽タイプ⇔四指、拇指揉捏法
・太陰タイプ⇔軽擦法
・太陽タイプ⇔把握揉捏法
これは、あくまでも私一人の場合であって、まだまだ検証しなくてはならない話ですが、もしこの一対一の対応が本当だとしたら、不得意な手技を学ぶにあたっては、それに対応する呼吸タイプを身につけるのが早道となります。
もしくは、とりあえず身につけるべき手技は何かというときに、得意な呼吸タイプから逆に得意な手技を導き出すことも出来るでしょう。
今にして思えば、私の記憶のビジョンから推察すると、右田先生の得意な呼吸タイプは少陽タイプだったように思います。指導される手技は、拇指揉捏法がほとんどでした。
少陰タイプの私とは、まったく相容れない身体の使い方をされていたわけですが、それでも私にとっては非常に納得感のあるご指導をしていただきました。
本当の名人というのは、得意・不得意という分野をやすやすと越えてしまうんですね。私も一歩でもその域に近づけるように、日々精進してまいります。