「リハビリマッサージ」と「マッサージリハビリ」
どうでもいいようなことにこだわってしまうところが自分にはありまして、まわりの方にとってはどうでもいい事なんだろうということは自分でも分かっているのですが、何かひっかかってしまうことがあると、納得のいくまで考えておかないと気が済まないところがあります。
しかも、その思索というか逡巡が一週間ぐらい続くこともざらにあり、とにかく何をするにも腰が重く、なかなか決められないという優柔不断な一面があります。しかし、単に優柔不断でどうしようもないということではなくて、一度考えつくした事柄に関しては、納得することができているので、過去を振り返って後悔するということがあまりないように思います。
とことん考えなければ気が済まない性格であるメリットは、上に書いた「後悔することがあまりない」ということ以外にもあって、すでに納得のいくまで考えつくしているので、似たようなシチュエーションでの判断の速さが速いということもあります。
ですので、年を重ねて経験を積み上げていくにつれて、経験したことのあるシチュエーションというものは当然増えていきますので、いろんな場面での判断の速さが速くなり、同じミスを何度も繰り返すということがないので、若いときよりもずっと生きやすくなっていくということがあります。
細かいことは気にしないで、とにかく自分の心というものをしっかりと持っていれば、人生の選択で間違うことなどそうそうないし、仮に間違ったところで、やり直せば済むことだし、命まで取られるわけではない・・・という考え方をされる方が多くいらっしゃることは理解していますし、そういう生き方、考え方を否定するつもりもありません。
ただ、自分はそういう生き方、考え方ができないですし、無理をしてやるつもりもないということです。まわりの人に迷惑をかけない程度に、ウジウジと悩みつづけていくしか、自分には道はないと思っておりますし、そういう方は私のほかにも一定数、どんな時代でもどんな社会にでもいるものなんだと思っています。
・・・という前置きを経たうえで本題に入ります。
訪問マッサージの現場において自分の行っている施術は「リハビリマッサージ」であって、「マッサージリハビリ」ではないということを考えていた時期がありました。
訪問マッサージについて、我々マッサージ師が「リハビリ」という言葉を使って宣伝するのはご法度なんですが(それでも使っている広告をよく見かけますけどね)、便宜上ここでは使わせていただきます。
「リハビリマッサージ」というのは、リハビリ目的のマッサージであって、「マッサージリハビリ」というのは、マッサージ師の行うリハビリである。
こんな風に勝手に定義をして、例によってああでもない、こうでもないと、頭の中でこねくり回していたわけです。
前者は、マッサージの技術を主として用い、リハビリの効果を上げるという考え方で、後者は、マッサージ師が理学療法士の代わりにリハビリを行うという考え方です。
以前勤めていた訪問マッサージ専門の治療院での営業活動というのは、後者の考え方で行われていました。
「介護保険枠がいっぱいで、理学療法士のリハビリを受けることができないから、その代わりに、医療保険を使える訪問マッサージでリハビリに準ずることをやりますよ」というわけです。
営業活動として、それ自体何も間違っていないですし、実際にニーズもあるわけですから、社会貢献という意味でも正しいと思えます。
法制度から見ても、実際に理学療法士は介護保険でのリハビリしか行えないようになっているのですから、それを補うということで、リハビリという言葉を使えないとしても、それに準ずることを医療保険を使って行うことは、何の問題もありません。
しかし、本当にそれでいいのか?・・・と思ったわけです。別にそれでうまくいっているのなら、どうでもいいような話なので、何も頭を悩ますこともないはずなんですが。
実際、何度かそういう主張を前の職場のいろんな場面で発言したこともあったのですが、軽くスルーされていました。
なぜスルーされるのか、その理由が自分でもよく分かるので、そのことで腹が立つということもなかったですし、治療院の方針に反してまで強く主張するようなこともなかったです。
ただ、長期的にマッサージ師の仕事のあり方というものを考えたときに、現行制度に頼り切ってしまう状態が続くと、最終的に自分たちの首をしめる結果になるのではないかと感じていて、「リハビリマッサージ」すなわち、マッサージの技術を用いて、リハビリの効果を上げるという発想を持ち、マッサージ技術のさらなる向上が、リハビリ効果の向上に直結するような意識を持って日々の現場に臨むことで、今後の情勢の変化にいかようにも対応できる「足腰の強い組織」「足腰の強い施術師」を作り上げていくことは、治療院の方針と激しくぶつかるものでもないし、それまでの方針と並行して進めることのできる考え方だと思ったのです。
柔道整復師の保険施術が近い将来(と言っても10年ほどかかるとは思いますが)、難しいものになっていくと同時に、あん摩マッサージ指圧師の保険施術も同様の難しさに覆われていくものと予測しております。
当事者の思いとは無関係に、世間一般の考え方からすると、あん摩マッサージ指圧師は柔道整復師と一括りのものと認知されていると思いますので。
その時、自力で立っていられるだけの足腰の強さを準備しておくことは、とても大事なことだと思います。
10年後というと、私も52歳になっているはずですので、足腰の衰えが目立ち始める頃合いです。
「偉そうに予測を立てていたわりに、足腰がフニャフニャじゃないか」などと言われないように、日々精進していきたいと思います。