呼吸法による四十肩・五十肩の予防・改善
肩に疼痛(痛み)と運動障害がある、
患者の年齢が40歳以降である、
明らかな原因がない
という3条件を満たすものを五十肩と呼ぶ。(Wikipediaより抜粋)
理由ははっきりとは分からないけれども、ある年齢を過ぎると、肩の関節まわりに炎症が起こり、動かしにくくなってしまう。
四十肩・五十肩とは、そういう疾患です。
年齢がひとつの条件となっていることから、加齢による身体の変化が何らかのかたちで関わっていることが推測できます。
まず肩関節自体が、加齢によって変化をしてしまうことが考えられます。
年齢とともに、関節の動きは固くなるうえに、年齢を重ねると、慢性的な運動不足になる傾向があり、関節を動かす習慣が減ってしまいます。
関節が固くなってしまった状態でも、日常生活で肩関節には負担がかかり続けます。
その結果として、慢性的な炎症が起きるわけです。
肩関節だけではなく、他の筋肉や関節も全身的に固くなっていくのですが、肩関節まわりに特に不調が出やすいのはなぜかと申しますと…
肩関節が他の部位に比べて絶妙なバランスで成り立っているため、そのバランスがちょっとしたことで崩れてしまいがちだからです。(参照記事:【肩関節】強靭さと繊細さの絶妙なバランス )
次に考えられるのが、加齢変化にともない肩甲骨の動きが固くなることです。
下図のように、肩関節は肩甲骨(ピンクに色分けした部分)と上腕骨(黄に色分けした部分)のあいだにある関節です。
肩甲骨側が受け皿で、上腕骨側がボール状に丸くなっています。
腕を上に上げる時、肩甲骨の受け皿の中で上腕骨のボールが回転していきます。
それと同時に、肩甲骨が胸郭(青に色分けした部分)の表面上をスライドしていきます。
つまり、腕を上げる動きには、単純に肩関節だけが関わっているのではなく、肩甲骨の動きも関わっているということです。(正確に言うと鎖骨の動きも含まれます。)
ですので、加齢変化にともなって肩甲骨の動きが悪くなると、肩関節に無理な負担がかかることとなり、四十肩・五十肩の原因につながっていきます。
最後に、肩甲骨の下にある胸郭の動きが悪くなることが考えられます。
肩甲骨がスライドしながら動くときの、その下にある土台部分が胸郭なのですが、その土台自体も本来は可動性を持っています。
しかし、その事実は知られていないことが多いです。(参照記事:肋骨は動くもの )
現代人の肋骨(胸郭の一部)は可動性が著しく制限されています。
運動不足ということも大きな要因ですが、肋骨は動かないものという認識の誤りがそれに拍車をかけています。
また、胸郭の一部である肋軟骨は、加齢とともに石灰化がすすみ、硬くなっていきます。
胸骨と肋軟骨の標本。透明部分が肋軟骨。
運動不足、それに、肋骨は動かないものという認識の誤り、加齢による肋軟骨の硬化、これらの理由により、胸郭もまた加齢とともに動きにくくなっていくのです。
土台である胸郭の動きが悪くなれば、肩甲骨の動きや肩関節の動きに悪影響を及ぼし、最終的に肩関節の炎症を引き起こします。
以上のことから、四十肩・五十肩の予防・改善のためにできることは、3段階に分けて考えられます。
1. 肩関節の運動(アイロン体操など)
2. 肩甲骨の運動(肘まる体操など)
3. 胸郭の運動(四象調息法など)
肩関節や肩甲骨の体操は、一般的にも知られるようになってきましたが、胸郭の運動は感覚的にも掴みにくいので、まだまだ一般的に知られていません。
それに、胸郭の構造を正しく理解していないと、胸郭の運動をしているつもりでも、別の動きが代償的に出てきてしまい、かえって肩こりや腰痛をひき起こす危険性があります。(アメーバブログ参照記事:コトバウワー時は息を吸ってはいけません について。)
身体の表面に近い関節や筋肉は、運動の感覚が掴みやすく、奥の方にある関節や筋肉は、逆に感覚が掴みにくく、意識しにくいです。
しかし、奥の方の関節や筋肉の動きを改善しないと、根本的な不調の改善ができません。
肩関節の不調が、肩関節自体の動きや肩甲骨の動きで改善されない場合は、さらに奥にある胸郭の動きに着目してみるのも手かもしれません。